妖獣ハンター 魔衣 第5話 妖獣死神 クランケンvs妖獣ハンター魔衣

”ピーポ・ピーポ” 救急車が激しく、サイレンを鳴らしながら

病院に向かっている。「後、どれ位だ?」

「15分は掛りますね!」   「15分か!もちそうも無いな!」

救急隊員は、酸素ボンベを抱えながら、自動車電話で病院に連絡を入れた。

「もしもし!後、15分位で着きますが、患者の様態が悪くて・・・」

「分りました 此方で手術の待機をします」  倉崎総合救急病院

「心肺停止の患者が、後15分で着くぞ!

カウンター(ショック)の用意だ!」 慌しく走り回る、看護士や医師。

”ピーポ・ピーポ”やがて救急車が、病院に 滑り込んできた。  キキーッ

隊員が患者を運びながら、 医師に様態を 説明している。

「川に浮かんでいたようです」   「分かりました!」

「心肺停止、すぐカウンターを」 ドコン~” 「どうだ?」 「だめです!」

「もう一度!」 ”ドコン~”二度目のカウンターショック が当てられた。

「どうだ?」  「だめです。回復しません!」

医師が目を見ると瞳孔が、完全に開いていた

「う~ん無理か!身元は分かったの?」  「いえ!まだ」

身元が分かるまで、病院の地下死体霊安室に 男性の死体は置かれた。

その夜1時半頃、5階の看護士が病室の巡回に

「さて、アキちゃん、行って来るわね!」   「先輩!気を付けて!」

先輩看護士が巡回に出た。

病院の夜中の見回りは、あまり気持ちのいいものでは無い。

各病室を回り中央階段まで来た時、人影が!(誰かしら、こんな時間に?)

人影を追って、階段を下りる。 (あれ?誰もいない)気のせいかなと思い

5階に戻ろうとした時、また影が 「誰、そこに居るのは?」

影に向かって叫んだ もう一度「そこに居るのは誰?」

看護士の言葉に 影は 沈黙したままであった。

看護士がその影に 近づいた 瞬間 いきなり影が飛び掛った

「あああ~やめて~ うう・・・」

「先輩遅いな~どうしたんだろう?」

後輩のアキは先輩を探しに、病室を見に 出かけた。

「おかしいな~トイレかな?」

5階ののトイレに行き、”コンコン” 「先輩います?」

 

ギィ一番奥のトイレのドアが開き、 ふと見ると、心臓をえぐり 

取られた先輩の死体が! 「ギャー!!」 スマホで110番

警察が、医師や看護婦に事情聴取を 行なっていた。

これで、病院内での殺人事件は7件目で、いずれも大病院の

看護士が 心臓をえぐられて 殺されていた・・とテレビ で

大きく 取り上げ、放送していた。

「魔衣、お風呂沸いたよ」ママの声が。

「ハーイ もう入っているわよ! あぁー気持ちがいい」

”コンコン”窓を小さく叩く音が・・  ( ゲッ!!チカン?)

「俺だよ、魔衣」窓ガラスにシバの姿が、

「あービックリした。失礼ね、レディが お風呂に入っている時に!」

プーッと噴出しながら 「レディ?お前が」 (なによ失礼な)

「ワハハハ、なるほどレディね!子供が 一人前の事を言っているな?」

「フン!で?何の用?」  「見たろう、ニュースで病院の殺人事件!」

「うん、まさか妖獣の仕業ではないよね?」  「そのまさか!だ」

魔衣の悪い予感は当たった「よーし、お風呂から出たら、すぐ行くね」  

「どうするの?」

「まだ、奴がいるかどうか、分からないがまず、病院を調べてみよう」

一人と一羽はテレポテーションで、事件のあった 病院に着いた。

「さて、妖獣の臭いはしないが?」  シバはジッと中を伺いながら、 

「どうやら、地下から かすかに臭うぞ?] 「よし、行ってみよう!」

階段を降りながら 辺りの様子を探る 倉崎総合救急病院の地下2階

「ここだ、臭いが近くなったぞ!魔衣、油断するな!」

「うん、任せて」

その時、身元不明の男性死体が、ムクムクと 起き上がりだした。

「出たな、妖獣!」

「ふふふ」 不気味な笑い声を出しながら、立ち上がってきた。

「なんだ?子供とカラスか?ワハハハ」 「お前は何者だー?」シバの声に

「俺か、クランケンと言っておこう!」  「もう、逃げ場は無いぞ。クランケン!」

「ふふふ、カラスごときが何だと、笑わせるな!」

覚悟~ 魔衣がファイヤークロスビームを 構えた時、クランケンの口から

「アドム・アリハ・マホル・ルドワ・ハ~ッ」

「魔衣、気をつけろ。妙な呪文を使うぞ!」 クランケンの 呪文が終わると

周りに 安置されていた死体が、ムクムクと動き出した。

「ゲゲッ!なに、これ?」

「ワハハッハ、こいつらはもう死んでいる。だから、殺す事はできん!さぁ、どうする?」

「かかれー!!」 クランケンの合図で、魔衣とシバに

動き 出した死体が、飛び掛かる。 ”ウリャー ドアーッ ドカーッ”

キックやチョップで応戦しても、すぐに また立ち上がり 戦いに来る。

「ふふふ。分かったか、モルグドールの 怖さを?」

「く!魔衣、きりが無い。サイキックルーパーで 消滅させろ!」

「了解。ハーッ」

魔衣の右手から、サイキックルーパーが モルグドールめがけて、放たれる。

”グワワ~ッ ジューッ”と溶け出すモルグ達 「いいぞ、その調子だ!」

「これで、最後の一人だ~」 グワワ~ッ 悲鳴上げながら、消えていく。

「あれ!妖獣クランケンは、どこ?」  「う?逃げられたか!」

周りを見渡しても、相手の姿は何処にも 無かった。

 

階段の方から、大勢の人の声が

「なんだ、 今の音は?誰か霊安室に 居るのか?」

「ヤバイ魔衣、ここは一旦引き上げよう!」魔衣とシバは、急いで霊安室を出て

地下出口の階段に急いだ。(う!つけて来る?)

妖獣の気配を感じながら、階段を下りる。

いきなり後ろから、メントビームが光った。「あぶない!」

”ゴワシャーン”壁が 崩れ落ちる。 一瞬交した魔衣は、すぐ反撃体勢に。

「おかしいな?気配がしないよ、シバ?」

「ム!今のうちだ、テレポートでここから 離れるぞ」  ”ブ~ンン” 

家に着いた魔衣は、二階の自分の部屋に戻り

「なんか疲れたな~でも、何処に 消えたのかな?」

ベットで仰向けになり、目を閉じた。あくる日。

「おはようー」 「おはー」

通学途中で、親友の由美に会うと、恵梨の

お母さんが入院してしまい、大変だと 聞かされた。

「本当、じゃー明日お見舞いに行こうか?」

「うん、この前誕生パーティで、ご馳走に なったしね。何時にする?」

「昼ご飯、食べてからでいいかな?」   「OK。一時半ね!」

「おはよう」 そこへ恵梨がやって来た。「どう?お母さんは」 「うん、何とか大丈夫」

「病気って、何なの?」 「子宮筋腫が大きくなって、手術しないと いけないかも?」

「痛そー」   「明日、二人でお見舞いに行くわ」

「いいよ、そんな事」  「それより今日は、服装検査だよ。 やばいよ」

見ると校門の前で、先生数名が登校してくる 学生の服を検査していた。

キンコン~カンコン~   2時間目の社会科の時間。

授業中、フッと窓の外を見ると、シバが来ていた。

魔衣はテレパシーで シバと連絡を 取り合った。

(魔衣、妖獣クランケンは、どうやら近くに 居るらしいぞ?)

(了解。注意するわ!明日、恵梨の お母さんのお見舞いに行って来る)

(病院は気をつけろよ)  (うん) 「おい!村上、どこを見ている」先生の声

「すみません。窓の外に 鳥が飛んでいたので?」

「バカ!鳥が飛んでいるのは、当たり前だろう~魚が飛んで いたら、大問題だぞ?」

先生の発言にクラス中、大笑いであった。 

翌日。 由美と待ち合わせして、南濃病院に。

「すみませーん。婦人科って何階ですか?」受付で病室を聞いて、

エレベーターに乗り、5階に。 「あった!この部屋だ」

”コンコン” ドアをノックする。「どうぞ」 「失礼します!」 先に恵梨も来ていた。

「お母さん、魔衣と由美が お見舞いに来てくれたよ」

「まぁ、どうもありがとう!」    「お体はどうですか?」

「あ!再検査の結果手術しないで 何とか 済みそうなの 明日退院出来そうなのよ」

「よかったね!由美」   「うん!」

高校生の女の子、三人集まれば賑やかな事。余りにうるさいので

隣の患者さんから、睨まれてしまった。

「ね!待合室で話そうよ」  場所を替えて又おしゃべりに励む。

「ちょっと、トイレに行って来る」 魔衣が席を立つ。

由美も「私も」 と言いながら、一緒に トイレに向かう。

由美がドアを開けて中に入った時、白い蒸気の様な 物が立ち込めていた。

「なに、これ?」   「う!何か消毒液のような匂い?」

その時、由美が膝から崩れ落ちていった。 「由美!由美!どうしたの?」   

「うん!殺気」

魔衣が振り返ると、トイレのドアから 妖獣クランケンの 顔が現れた。

「ワハハハ、待っていたぞ 魔依」 「今度は逃がさないよ クランケン!」

魔衣はとっさに、ファイヤークロスビームを 放そうと構えた。 

その背後から、由美が 魔衣の首を掴み、締め付ける。 

驚く魔衣 。 「ゆ、由美?どうしたの?」

「ふふふ。どうだ、親友に 絞め殺される 気持ちは?」

(く!クランケンの 妖術で由美が?仕方ない)

”ドス”魔衣の肘撃ちに、ひるんだ隙に 解除フラッシュを放つ。

「ハーッ」 シュパ~ッ 「由美しっかりして!」 「うーん」

由美は 意識がはっきりしない様である。

「ふふふ、さすが 噂の妖獣ハンターだ」

「だが所詮、子供のお遊びだ!ムドラ・ラルバ・ドレゲ・タントラ・・・・」

奇妙な妖語が唱えられた。  「うーん、体が締め付けられる!」

「ワハハハ」 妖獣クランケンの 笑い声が、こだまする。

「どうだ、動けまい。 ジワジワとお前の体を締め付けて、やがて骨も折れ

 内蔵が 潰れて死ぬのさ!」

「ゲホー 苦しい!!」

魔衣の体がミシミシと音を立て出し、やがて”ボキ!”不気味な音が響いた!

魔衣の アバラ骨が折れていく。  「ガハー」

口から血反吐が流れる。”ボキ!”又もアバラ骨が折れ、肺に突き刺さる。

大量の血が、魔衣の口から滴り落ちる。 意識が次第に遠のく、魔衣。

(だめだ、意識が・・・)崩れ落ちる 魔衣。

「ふふふ、伝説もこれだ終わりだな!ワハハハ」

クランケンは勝ち誇った様に、魔衣の前で 仁王立ちして、吼えた。

「妖獣ハンターは、俺が仕留めたぞ!」

その時、真横からビームがクランケンに・・”ガワシャーン”吹っ飛ぶクランケン。

「くっ!何者だ?」 「魔衣、大丈夫か?」倒れた魔衣に 駆け寄る

「しっかりしろ、今お前が負けたら、 世界は再び闇になるぞ!」

「うーん」 薄らぐ意識の中で(誰なの?)

「俺だ、カリバだ!」  (カリバ?カリバが何故、わたしを?)

「貴様はカリバ! 妖獣のくせに、裏切るのか?」 睨むクランケン

「俺は、借りを返しに来ただけさ!」  魔衣を助け起こし、身構えるカリバ。

「貴様~下級妖獣のくせに、俺様と やり合うのか?」

「そうだ、魔衣だけは殺させん!」

「バカな奴。裏切り者は、どうなるか 分かって無い様だな?」

ガシ~ャ~ン 派手な音が 振り向くクランケン

窓ガラスを破って、飛び込んで来た。シバ 「魔衣、しっかりしろ!」

魔衣の耳に、聞き覚えのある声が (シバだ!シバ来てくれたのね)

「カリバ、見直したぞ!」 「おう、シバか。魔衣に借りを返しに来た だけさ!」

予想外の展開に、クランケンは

「こうなりゃ面倒だ。皆まとめて、地獄へ行きな!」

クランケンの両手から、ゾンボシュートが、”グワォーン” カリバに命中。

吹き飛ぶ カリバ。「ワハハハ。所詮、格が違うのさ。下級な お前達では勝てん」

「魔衣、立ち上がれ!ブレードを抜くのだ!」シバの声に必死になって、立ち上がる魔衣。

「うるさい、カラスだ。死ね!」   ドウン~” ゾンボシュートがシバを

めがけ放たれた。一瞬早く、魔衣が Gクラッシャーを放つ。

 ”ドドド~ン” パワーがぶつかり合う。

魔衣がフラフラしながら立ち上がり、右手の人差し指を 天高く突き上げた時、

ブウ~ン 輝く煙の様なものが 現れ

黄金の渦が魔衣の右手に集まり出した。 「おお!!それは」

伝説の黄金に輝く、DOUSNブレードが 現れた。

「おお!それが伝説の剣(つるぎ)か? 丁度、良い機会だ。それを頂こうか!」

[この俺様が 妖獣の世界を 牛耳つてやるわ!]

妖獣クランケンは、またもラミス・コリガ・アムリ・タントラ・・・

魔衣の体が、宙に浮く。 「ワハハハ」勝ち誇るクランケンが・・「そんなバカな?」

シャ~ァア~ッ  クランケンの妖語をブレードが、切り裂いていく。

「俺の妖術が、敗れるとは?信じられん」

「魔衣、いまだ!!」 シバの声に、魔衣は DOUSNブレードを

クランケン めがけて、投げつけた。

「ゴワオ~オォ」 見事にクランケンの眉間に 突き刺さった。

「グホ~ 恐ろしい小娘だ!ククク、甘く見すぎたわ!」

「ゲゲ~ オオ~ン だが勝ち誇るなよ小娘!」

[妖獣を 甘く見ると 痛い目に会うぞ グエエエエ~]

最後のお叫びを 上げながら、 消滅するクランケン。

「ハァハァ勝った!!」

胸の痛みを抑えて、カリバの元に掛け寄り、「カリバ、しっかりして!」

「カリバ、しっかりしろ!」 魔衣とシバの声に、カリバは

「無駄だ!だが最後に借りを、魔衣に返す事が出来て良かった・・ガハ~ッ」

「魔衣、最後に俺がある長老から、聞いた 話を聞いてくれ」

「うん 聞くから しつかりして」

「最近、もう一つのDOUSNブレードが、動き出した。 なぜ、ブレードが

 二本あるか?それは遠い昔、妖獣との戦いで、超能力者DOUSNが

 妖界に攻め込み 戦いの末、妖獣達を封印した。

 その勢いで、今度は魔獣界に戦いを挑んだが

 そこでDOUSNは 魔獣カルデラ姫と 恋におちた。

 やがて、戦いに傷つき 帰る事になったDOUSNは二本のブレードの内

 銀の剣(つるぎ)を”必ず戻って来るから”と

 言い残し、カルデラ姫に預けたが、魔獣との 戦いの傷が元で死んでしまった。

 

 その後、DOUSNに恋するカルデラ姫は、3000年の長期にわたり

 二度と帰らぬ 恋しい人DOUSNを待ったが、やがて悲しみに嘆き苦しみ

 自ら恋しい人が 残した剣(つるぎ)と共に、魔界の奥深い

 征殺山に身を投げ、消滅した。 その後、多くの魔獣が剣(つるぎ)を手に

 入れようと、征殺山に探しに近づいたが 凄まじい磁気嵐の吹き荒れる征殺山では、

 多くの魔獣達も命を落とした。

 以後、DOUSNブレードは伝説になった。が!最近、征殺山の磁気嵐が

 剣(つるぎ)を 魔獣の国境線近くに、 吹き流した。

 何処のあるのか、今だ手に入れた者は いないが、やがて、誰かが持ち主に

 なる時が来る。魔衣、妖獣や魔獣に剣(つるぎ)を渡しては大変な事になる。

 魔衣!必ず金と銀のブレードを揃え・・・」  「カリバ!しっかり!」

 「カリバ、聞こえるか?しっかりしろ!!」  「・・・気をつけろ・・・さらば・・・」

 ”カリバ!~”魔衣の声が風に乗って 遠くまで、流れていった。

「あれ?私どうしたの?」

由美がキョロキョロと辺りを見回しながら、「魔衣、口から血が流れているよ」

「え?ああ、由美が倒れそうになったので、抱えたら一緒に転んで

胸と顔面を 打ったのよ~痛い~」

「うそー。丁度、ここ病院だから、治療してくれるよ!」

「うん、由美は大丈夫なの?」  「クラクラするけど、大丈夫」

と言い ながら魔衣を抱えて、看護婦さんを呼んだ

「どうしたの?その血は!」 訳を話して、特別に急患してもらい、

治療を受けることに、CTスキャンを する事になった。 若い医者が、

「おい、おい!アバラが折れているぞ、3本も?すぐ、入院の用意だ!」

「ゲ!困ったな?」  慌しくなった治療室(ここから、逃げないと)

「由美、私大丈夫だから帰るね。内緒ね!」

「待ってー 魔衣、骨が折れているのよー」

由美の叫び声を聞きながら、魔衣は風の 様に走った。

空から  「魔衣、大丈夫か?」

「あ!シバ。うん、これくらい 何でもないわ・・イテテテ・・」

「ま!お前なら6時間もあれば、元通りに 直るだろうが!」

「うん!でも、今日はピンチだった!」

「これから、どんな妖獣が 出てくるかも知れん。早く直せよ!」

「ありがとう。シバ」

魔衣は走りながら、家に向かって テレポテーションしていった。                                                     第5話  完

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